更新日:2024年3月15日
今年5月、ブラジルで開催された、聴覚障がい者の国際的なスポーツ大会「第24回夏季デフリンピック」。
本市出身の大学生、齋藤京香選手が競泳女子100メートルバタフライに出場し、見事、金メダルを獲得しました。
世界を相手に力強い泳ぎで勝利を勝ち取った齋藤選手に話を聞きました。
ブラジルでの齋藤選手の最初の競技は200メートル個人メドレー。結果は6位入賞でしたが自分では納得のいく泳ぎができなかったといいます。「次は思い切り楽しもう」と気持ちを切り替えて臨んだ翌日の100メートルバタフライ予選は1位。「予選の段階で『いけるかも』という感覚がありました。前日の悔しさをぶつける勢いで、決勝に臨みました」
身長153センチという小柄ながらダイナミックで力強い泳ぎが齋藤選手の持ち味。決勝では、最後まで気迫に満ちた泳ぎを貫き、自己ベストも更新する1分6秒98でゴール。2位とのタイム差0・03秒という接戦を制しました。
「ゴールしたとき、自分の順位が全くわからなかったんです。電光掲示板を見て驚きとうれしさでいっぱいになり、自然に何度もガッツポーズしていました」と笑顔で話します。
「表彰台で金メダルを首にかけてもらったときに、初めて勝ったんだと実感が湧きました。それと同時に、これまで応援してくださった人たちへの感謝の気持ちが込み上げてきました。このメダルは、自分だけの力では取ることができなかったと強く感じます」と、ずっしりと重みのある金メダルを見ながら語ってくれました。
齋藤選手が水泳を習い始めたのは小学1年生のとき。小さい頃から身体を動かすことが大好きだった齋藤選手は「何かひとつでも得意なものを見つけて、自分の強みにしてほしい」という家族の思いから、体操や合気道、サッカーなどにも意欲的に取り組みました。そして水泳に専念した中学在学中から目覚ましい活躍を遂げ、高校2年生のときにデフリンピックへ初出場します。
「デフリンピックは国際大会の中でも参加国が多く、選手のレベルも高い大会。初出場したときは、緊張感あふれる雰囲気に圧倒されました。400メートル自由形で4位入賞できたものの、メダルには一歩届かず、次こそはという気持ちが強くなりました」と当時のくやしさを振り返ります。
常に前向きで笑顔がとても印象的な齋藤選手に元気の源を聞くと「酒田で練習をしていると、『頑張れの』『応援してっからの』とたくさんの方から声をかけていただいて、その声に本当に励まされています。もうひとつは、辛い練習を一緒に乗り越えてきた大切な仲間の存在。いつも周りに支えてもらって今があると実感しています」と笑顔を見せます。
「険しい顔をしていると気持ちまで苦しくなるので、笑顔でいることを心がけています。といっても、周りからいつもたくさんのサポートと幸せをいただいているので、自然と顔がほころぶことのほうが多いかもしれませんね」と、メダル以上にまぶしい笑顔を見せてくれました。
今回、齋藤選手は6種目に出場予定でしたが、得意の200メートルバタフライは泳法違反で失格、その他リレーなど3種目は、日本選手団から新型コロナウイルス陽性者が相次いだため棄権となりました。「残念だったけど、泳ぎはしっかり修正して、今回の思いを次の大会にすべて生かしたい」と、来年のアルゼンチンで行われる世界ろう者水泳選手権、そして3年後のデフリンピックに向けて意気込みは十分。
今後については「大学卒業後は酒田を練習拠点に世界を目指せたらいいなと思ってます」。
家族や仲間の応援を追い風に、さらなる高みへ。齋藤選手の活躍から、今後も目が離せません。
2000年生まれ。2015年、世界ろう者水泳選手権に初出場。その後も国内外の大会で優れた成績を収め、2017年に酒田市民栄誉賞を受賞。今年3月には、大学スポーツ協会よりパラアスリート・オブ・ザ・イヤー優秀賞が贈られた。