更新日:2025年3月31日
酒田市では、市内の畜産農家で堆肥を供給できる方を紹介する「酒田市堆肥供給者リスト」を作成しました。
販売価格や運搬・散布の方法については、変更されることがありますので、購入をご希望の方は直接堆肥供給者にお問い合わせください。
なお、成分分析数値は、令和5年度時点のものであることをご承知おきください。
令和7年3月 堆肥供給者リストをマップ化した「酒田市堆肥利用マップ」を作成しました。こちらも合わせてご利用ください。
堆肥は農家にとって極めて重要な資源です。その有効活用により、気象災害によるリスクを軽減し、作物の安定した生育を支えます。特に堆肥は土壌環境を改善し、作物栽培に適した土壌を形成します。これにより、高温障害などの気象変動の影響を軽減することが可能です。さらに、堆肥の使用は化学合成肥料の使用量を削減し、コストを低減する効果もあります。堆肥の効果的な活用によって、儲かる農業を実現しましょう!
以下では、堆肥の施用効果および堆肥を用いた肥料設計のための手法を説明します。
1 | 作物への養分(窒素・リン酸・カリウムなど)供給 |
---|---|
2 | 地力窒素や保肥力の向上(化学性の改善) |
3 | 土壌の通気性・保水性・排水性の改善、団粒構造の発達、土壌の硬さの改善(物理性の改善) |
4 | 土壌中の有機物増加により微生物活性の向上(生物性の改善) |
堆肥を適正に施用することで1~4の効果を得ることができます。作物に必要な養分を供給し、土壌環境を改善し、根域の拡大や根群の発達の促進、作物栽培に適した土壌を形成します。結果として、生育が安定し、気象災害に強い稲づくりが可能となります。また、化学合成肥料を堆肥に置き換えることで、肥料コストを削減できます。
さらに、堆肥を施用すると有機物の一部は微生物によって分解されにくい腐植※となり、長期間にわたって土壌中に貯留されます。腐植は土壌の保肥力を高め、団粒構造の形成など多くの効果をもたらします。堆肥の施用効果を高めるためには、水田ではケイ酸質資材の併用も重要です。
※腐植:有機物に存在する黒い部分で、微生物の活動で生成されていると考えられ、肥沃な土壌を形成する上で非常に重要な物質です。
次に、堆肥成分から肥料成分(窒素・リン酸・カリウム)に置き換えるための考え方やその計算方法を説明します。
1 | 家畜ふん堆肥は基肥の代替資材として利用する |
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・堆肥は速効的な効果が必要な追肥の代替には向かないことを考慮する | |
2 | 基肥として施用する窒素分の30%程度を代替の目安とする |
・堆肥の肥効は地温などに影響され、作物への作用が不安定となるため、窒素分の30%程度を堆肥により補うことを目指す | |
3 | 堆肥中の肥料成分は、肥効率※をかけて有効成分量に換算する |
4 | 多量施用は、養分過剰や窒素過剰などの危険性をはらんでいることを理解し、適正な施用を行うことが重要である |
・堆肥の施用履歴、土壌状態、使用する堆肥の成分量により適用施用することが必要で、定期的な土壌診断等による圃場管理を心がける |
・堆肥は畜種によって、特徴や成分が異なる。
・C/N比(窒素成分に対する炭素成分の割合)の程度により、肥料効果が表れるスピードが異なる。C/N比が低い場合は、肥料効果が早く現れ、高い場合は肥料効果がゆっくりと現れる。
・肥料成分量は、一般的には牛<豚<鶏である。(牛が最も少ない)
・肥料効果が早く現れる堆肥は、施用してから利用されるまでの期間が短くて済むため、春先の基肥として利用できるが肥料成分がなくなるのが早い。一方で肥料効果がゆっくりと現れる堆肥は、長期間に渡って少しずつ肥料成分が溶出する。
畜種 | 特徴 |
---|---|
牛ふん堆肥 | ・C/N比が他の家畜ふん堆肥に比べて高い傾向で、肥料効果がゆっくりと現れる。 |
豚ぷん堆肥 | ・牛ふん堆肥と比較して、C/N比とカリウムが低く肥料効果が早く現れる。 |
鶏ふん堆肥 | ・C/N比が他の家畜ふん堆肥に比べて低く、肥料効果が早く現れる。 |
(ア)施用する堆肥の成分含有率を確認する。
種類 | 窒素 | リン酸 | カリウム |
---|---|---|---|
(例)牛ふん堆肥 | 0.7% | 1.0% | 1.3% |
(例)豚ぷん堆肥 | 1.0% | 2.5% | 1.7% |
(イ)肥料成分へ換算するための肥効率※を確認する。 ※堆肥に含まれる肥料成分のうち作物に吸収される割合
種類 | 堆肥窒素含有率 (現物) | 肥効率 | ||
---|---|---|---|---|
窒素 | リン酸 | カリウム | ||
牛ふん堆肥 豚ぷん堆肥 | 0%~1% | 10% | 80% | 90% |
1%~2% | 30% | 80% | 90% | |
2%以上 | 40% | 80% | 90% | |
鶏ふん堆肥 | 0%~1.6% | 20% | 80% | 90% |
1.6%~3.2% | 50% | 80% | 90% | |
3.2%以上 | 60% | 80% | 90% |
(ウ)堆肥由来の肥料成分を計算する。
種類 | 窒素量 | リン酸量 | カリウム量 |
---|---|---|---|
牛ふん堆肥 (500kg/10a施用) | 0.4kg (窒素)0.7 %×(肥効率)10%×500kg≒0.4kg | 4kg (リン酸)1.0% ×(肥効率)80%×500kg=4kg | 5.9kg (カリウム)1.3% ×(肥効率)90% ×500kg≒5.9kg |
豚ぷん堆肥 (300kg/10a施用) | 0.9kg (窒素)1.0% ×(肥効率)30% ×300kg=0.9kg | 6kg (リン酸)2.5% ×(肥効率)80% ×300kg=6kg | 4.6kg (カリウム)1.7% ×(肥効率)90%×300kg≒4.6kg |
品種名 | 施用時期 | 肥料成分 | 基準量 (10a当たり) | 対応(牛ふん堆肥) | 対応(豚ぷん堆肥) |
---|---|---|---|---|---|
散布量:500kg/10a | 散布量:300kg/10a | ||||
はえぬき | 基肥 | 窒素 | 6kg | 5.6kgを肥料で施肥 (基準量)6kg-(堆肥肥料分)0.4kg=5.6kg | 5.1kgを肥料で施肥 (基準量)6kg-(堆肥肥料分)0.9kg=5.1kg |
リン酸 | 6kg | 2kgを肥料で施肥 (基準量)6kg-(堆肥肥料分)4kg=2kg | 堆肥のみ施用 (基準量)6kg-(堆肥肥料分)6kg=0kg | ||
カリウム | 6kg | 堆肥のみ施用 (基準量)6kg-(堆肥肥料分)5.9kg=0.1kg | 1.4kgを肥料で施肥 (基準量)6kg-(堆肥肥料分)4.6kg=1.4kg |
※出典 農林水産省ホームページ「堆肥施用時の施肥設計」、山形県稲作指針、千葉県「家畜ふん尿処理の手引き」等
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