更新日:2026年8月17日
飛島には、国指定天然記念物「飛島ウミネコ繁殖地」があり、毎年多くのウミネコが飛来し、繁殖しています。その一方で、飛島では飼い主のいない猫が暮らしており、ウミネコの繁殖地への侵入や捕食など、繁殖環境への影響が確認されています。
そこで、一般社団法人鳥海山・飛島ジオパーク推進協議会では、本市と連携し、飛島の貴重な自然環境とウミネコ繁殖地を将来にわたって守っていくため、関係機関や専門家、地域の皆さんとともに、ウミネコと猫の双方に配慮した対策を進めています。
その一環として、飛島で暮らす飼い主のいない猫を島外へ移送し、健康管理や人馴れ訓練を行った上で、新しい飼い主につなげる取り組みを実施します。
このページでは、この取り組みを行うことになった背景や調査結果、これまでの経過、今後の取り組みについて紹介します。
飛島は、山形県酒田市から北西約39kmの日本海上に位置する島です。豊かな自然環境を有し、トビシマカンゾウなどの植物や、多様な野鳥が見られるほか、全国でも有数のウミネコの繁殖地として知られています。
「飛島ウミネコ繁殖地」は、1938年に国の天然記念物に指定され、現在は舘岩、百合島、御積島、赤島、小赤島、大赤島の6か所が指定されています。
しかし、飛島のウミネコ繁殖地では、近年、繁殖状況に変化が見られています。特に、繁殖地の一つである舘岩では、2014年の調査以降、ウミネコの営巣が確認されない状態が続いています。 一方、百合島ではウミネコの営巣が継続して確認されており、近年は営巣数が増加する傾向も見られています。
飛島では、これまでもウミネコの繁殖状況や、繁殖地における猫の生息状況について調査が行われてきました。
この調査では、百合島において、猫のものと考えられる糞からウミネコの羽毛などが確認されたほか、ウミネコの成鳥の死体が14羽以上確認されました。さらに、調査中には、猫が実際に百合島へ上陸している様子が写真により記録されました。また、島民への聞き取りでは、猫が飛島本島から百合島へ泳いで渡る様子を目撃したとの証言も得られています。
こうした調査結果から、飛島のウミネコ繁殖地を保全する上で、猫によるウミネコへの影響について、継続して状況を把握していく必要があると考えられるようになりました。
関連する調査
平成26年度 モニタリングサイト1000 海鳥調査報告書
環境省 生物多様性センター
関連する研究
山形県飛島のウミネコ繁殖地のネコによる被害状況
富田直樹・佐藤文男・岩見恭子
『山階鳥学誌』47巻2号、123~129、2016年
その後、ウミネコ繁殖地の一つである舘岩では、2014年の調査以降、ウミネコの営巣が確認されない状態が続いていました。
そこで、舘岩における猫の侵入状況や活動の実態を把握し、ウミネコの繁殖地への影響等を確認するため、2025年に猫のモニタリング調査を実施しました。
調査は、5月から8月末までの期間、舘岩内の10か所にセンサーカメラを設置し、猫の生息状況や行動を記録する方法で行いました。
その結果、猫がウミネコの幼鳥をくわえて運ぶ様子が撮影され、猫によるウミネコの捕食が実際に確認されました。
また、舘岩の広い範囲で猫の活動が確認されたほか、子猫も確認され、舘岩が猫の活動・繁殖の場となっていることが分かりました。猫の撮影回数は5月下旬から増え始め、7月中旬以降に減少する傾向が見られました。この時期は、ウミネコの産卵から孵化、幼鳥が増える時期と重なっています。
関連する調査
令和7年度 舘岩ネコモニタリング調査報告書
酒田市企画部文化政策課
2014年の百合島での調査と、2025年の舘岩でのモニタリング調査により、飛島のウミネコ繁殖地に猫が侵入していること、また、猫によるウミネコの捕食が実際に生じていることが確認されました。
一方で、ウミネコの営巣数や繁殖状況には、餌の状況、気象条件、海洋環境など、さまざまな要因が関係すると考えられます。そのため、猫による捕食だけをウミネコの営巣数減少の原因とすることはできません。
しかし、猫による捕食が実際に確認されたことを踏まえると、 ウミネコ繁殖地を保全するためには、猫による影響についても対応を検討する必要があることが明らかになりました。
こうした調査結果を踏まえ、酒田市では、専門家や動物愛護関係者、地元関係者等とともに、飛島ウミネコ繁殖地の保全と猫への配慮の両立を目指した今後の対応について検討することとしました。
調査結果を受け、海鳥の有識者、動物愛護団体、県獣医師会、地元関係者等で構成する「酒田市飛島ウミネコ繁殖地再生委員会」において、飛島のウミネコ繁殖地を保全するための今後の対策について検討しました。
委員会では、2025年のモニタリング調査において、猫によるウミネコの捕食が確認されたことに加え、百合島で猫の上陸が写真により記録され、島民からも猫が飛島本島から百合島へ泳いで渡る様子を目撃したとの証言が得られたことなどを踏まえ、猫による捕食をウミネコの営巣数減少に影響を及ぼす要因の一つと評価しました。
その上で、ウミネコ繁殖地の保全と猫の動物福祉の双方に配慮した対策として、島に暮らす飼い主のいない猫を島外へ移し、新しい飼い主につなげる取り組みを進めることが提案されました。
取り組みを検討するにあたり、これまで島で猫と暮らしてきた島民の皆さんの意見もお伺いしました。
そこで、2025年9月に、飛島の勝浦・中村・法木地区に住む島民を対象として、ウミネコや猫に関するアンケートを実施し、38人から回答をいただきました。 アンケートでは、
などについて意見を伺いました。
回答には、ウミネコ繁殖地の保全を求める声だけでなく、「猫も島にとって身近な存在であり、ウミネコと猫の双方に配慮してほしい」という意見もありました。
こうした意見も踏まえ、酒田市では、単に猫を島から排除するのではなく、猫の命にも配慮しながら、ウミネコ繁殖地の保全につなげる方法を検討してきました。
これまでの調査や有識者等による検討、島民アンケートの結果などを踏まえ、一般社団法人鳥海山・飛島ジオパーク推進協議会と酒田市が連携し、飛島で暮らす飼い主のいない猫を島外へ移送し、新しい家族との出会いにつなげる取り組みを進めます。
飛島のウミネコ繁殖地は、国指定天然記念物であり、飛島を代表する貴重な自然環境です。一方で、飛島で暮らしてきた猫も一頭一頭が大切な命を持つ存在です。
そのため本事業では、「ウミネコを守るために猫を排除する」のではなく、ウミネコ繁殖地の保全と猫の動物福祉の両立を目指します。
これまで同様の課題に取り組んできた小笠原諸島、天売島、御蔵島などの事例も参考にしながら、飛島の自然環境や猫の生息状況、島民の皆さんの意見などを踏まえ、飛島の状況に合った方法を検討しながら進めます。
島外へ移送した猫は、捕獲後すぐに一般家庭へ預けるのではなく、まず一時飼養施設で健康状態や性格などを確認します。猫にはそれぞれ、年齢や健康状態、人への馴れ具合、性格などに違いがあります。そのため、一頭一頭の状態を見ながら、必要な獣医療や健康管理、人との生活に馴れるための対応を行います。
取り組みの中では、必要に応じて、
などを行います。
健康状態が安定し、家庭での飼養が可能と判断された猫については、預かりボランティア等の協力を得ながら、新しい家族との出会いにつなげることを目指します。
猫の生息状況等の確認
↓
対象となる猫の捕獲
↓
島外へ移送
↓
一時飼養施設で健康状態等を確認
↓
必要な獣医療・健康管理
↓
一時飼養施設で馴化・飼養
↓
預かりボランティア等による一時飼養
↓
譲渡先を探す
↓
新しい飼い主へ譲渡
本取り組みは、令和8年度から令和10年度までの3年間を予定しています。今後は、飛島に暮らす飼い主のいない猫の生息状況や健康状態等を確認しながら、対象となる猫の捕獲・島外移送を順次進めていきます。
また、猫の譲渡だけを目的とするのではなく、ウミネコの繁殖状況や猫の生息状況等を継続して確認し、事業の効果を検証します。その結果を踏まえ、必要に応じて取り組みの内容を見直します。
今後の取り組みの進捗状況や猫たちの様子、譲渡会の開催情報などは、専用ホームページ等を通じて随時お知らせします。
島外へ移送した猫が新しい家族と出会うためには、預かりボランティアや譲渡先となるご家庭など、多くの方の協力が必要です。猫を家族として迎えること、預かりボランティアとして猫の新しい生活を支えることなど、この取り組みへの関わり方はさまざまです。
今後、譲渡の対象となる猫の情報や譲渡会の開催などについては、 現在準備を進めている専用ホームページ等を通じてお知らせします。ホームページの開設時期や、寄付・物資等による支援については、準備が整い次第ご案内します。
「ウミネコの繁殖地を守ることと、飛島で暮らしてきた猫の命をつなぐこと。」
その両方を大切にしながら、取り組みを進めていきます。
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